猫の鏡台

あだ名はにゃんにゃん。犬が好き

歌舞伎座三月大歌舞伎・夜の部

この目で初めて見るタカタマコンビの恋人役「於染久松色読販」不良夫婦が人をゆするお話。

玉三郎のあだっぽい女房役がよい。早替りの場が省かれていたので、南北物として物足りない。

 

次の踊りも仁左衛門玉三郎の「神田祭」。息のあった様子は宝塚の名コンビを見ているようで嬉しくなる。

 

最後が玉三郎演出、壱太郎演じる「滝の白糸」。これはやっぱり新派で演じるものじゃないかしら。感覚が合わない。壱太郎が玉三郎の口跡に似ていた。

あらすじの感想にふれると、「白糸ちゃん、そんなにつっぱしったらだめだよ…」と苦い思いで観ていた。

白糸は旅芸人の女。舞台の上でこそ「太夫」とあがめられるけど、舞台をおりればその身は全てお客様に見ていただく預かり物、とたしなめられる。自分を主役として生きてはいけない身分なんです。スポットライトは浴びるけど、中身はウブな女の子。

ある日偶然、初対面の男の人にお姫様だっこで早馬に乗せられたものだから、白糸は一回の逢瀬ですっかり恋に落ちてしまう。その男の子は今は訳あって貧しそうだけど、人品骨柄いやしからぬ青年。

後日、偶然二人は再開。はしゃぐ白糸と、白糸が誰だか思い出せない青年の欣弥。

テンションが噛み合わないまま白糸は欣弥が勉強したいけれどお金がないことを知り、「だったらあたしに応援させてくださいな」と言う。

ここで欣弥が一気に引いているんですね。欣弥にしてみれば、初対面のようなのにこの女の子はやけにはしゃいでるし、勉強のお金を出してくれると言う。初めて会った人にお金を出してもらうなんてなんだか怖い。

白糸にしてみれば、ここで欣弥と再開できたのは運命。何としても縁を切りたくない。自分にできることはないかと考えて、旅芸人の自分ならではの、普通の女の子にはないような稼ぎを差し出そうとする。欣弥に「その目的は?」と聞かれても、欣弥と付き合いたいという本心を言えず、「あなたの夢が叶えばいいの」なんて言っちゃう。なんでそこだけ乙女なの!お金出してあげるなんて、女社長みたいなこと言ってるのに。本当は、彼とまた会いたいだけだよね。

一方、欣弥くん。どうもこの女の子はお金に困ってないみたいだし、自分は勉強もしたいしなぁ。その見返りを聞いても「勉強してくれればいい」って特に変なことも言ってないし、さらにちょっと突っ込んで聞いて見ても「わたしと家族みたいな付き合いをしてくれればいいの」としか言わない。それならできる!

白糸ちゃんにしてみれば、家族=わたしと結婚して…って気持ちだったんじゃないでしょうか。でもその言葉は直球すぎて口に出さず、やっと言った言葉は彼に裏を読んでもらえない。

 

二人は息が合わないまま、白糸が仕送りをするということで別れます。

その後白糸のおかげで学び無事職を得た欣弥は、白糸を迎えに行くこともなく、二人はある裁判がきっかけで死を迎えます。

 

白糸の恋心は可愛いんだけど、それはあくまで自分のもので、欣弥くんにとっては怖くてびっくりさせられるものでしかなかった。二人は死の世界に旅立ちますが、あの世でも結ばれることはないんじゃないかと思う…見る方向が違うままだから。

欣弥は鈍感で考えるとなんだかイライラしてくるんだけど、やっぱり白糸が可愛い乙女に見えて、実は自分しか見てないことが原因な気がする。

 

歌舞伎座でこんなことを考えるのも楽しいですね。